7月9日より開催の展覧会

 


小野久留美個展「(E)closion」

会期:2022年7月9日(土)-7月18日(月・祝)
会場:rusu「ナオ ナカムラ」
東京都目黒区下目黒3-4-9
会場時間:14:00-19:00 *7月11日、15日休み
料金:無料
作家:小野久留美
お問合せ:nakamuranao19900715@gmail.com(中村奈央)



この度、rusu「ナオ ナカムラ」では、小野久留美個展『(E)closion』を開催いたします。


小野久留美は1995年栃木県生まれ。2019年ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズのファイン・アート学部を卒業。在学中にアーティスト、アネット・メサジェへの作品提供を皮切りに、ロンドンのテート・モダンや、ソチのハイアットリージェンシーホテルでのグループ展に参加。帰国後は東京と栃木を拠点に展覧会のみならずアートフェアへ参加するなどコンスタントに発表を続けています。

今展は彼女にとって5度目の個展であり、ナオ ナカムラでは初個展です。


小野の作品は、すべてのものは大地から生まれ大地へ還る万物流転である自然の摂理の中で、成長や衰退の物理的な変化に逆らうように何かを永遠に留めておきたいという人間の保存に対する欲望と、成長や衰退の物理的な変化にある無常の儚い美しさを”写真を紙に印刷して土中に埋め、掘り起こす”という手法で可視化しています。


制作過程にある土中での容態は直接的に目で確かめることが出来ないため、彼女自身の経験を元にその都度、季節や気候や土質によって掘り起こすタイミングをコントロールしています。土中に存在する自然の力によって作品は常に変化するため同じものは二つとなく、掘り起こすタイミングにズレが生じると作品は土中に還り、姿形を失います。

紙も遡れば土中で長い歳月をかけて育てられた木が原料であり、埋めるという行為は埋葬と復活を想起させたり、土は命の根源とも言えるように、小野は「究極の保存とは大地に還すことなのではないか」と考えるようになりました。


展覧会タイトル『(E)closion』(=羽化、孵化)は、”内に閉じた状態から開かれた外に出現する”という語源から成り立ちます。

会場となるrusuも約80年の間プライベートに閉ざされた私宅でしたが、オルタナティブスペースとなり開かれた場へ、そしてこのあとまもなく事実上の取り壊しを迎え閉ざされますが、土地として再び外に開かれる予定です。


今展では、会場の庭で育つ植物の記録、コロナ禍でのステイホーム時に彼女が終生育てた蚕の変態の記録、不特定の妊婦さんのお腹を接写した記録、そして、長期保存に不向きである感熱紙に印刷された私の子どものエコー(超音波)写真の記録をモチーフに制作した未発表作をメインに構成します。


土中での制作と同様に、私宅で過ごす日常も、しなやかな繭に包まれた蚕も、胎内で大切に育まれる命も、この目で直接見つめることはできませんが、そこにはそれぞれの時間で変化し続けるそれぞれの今が確かに存在しています。


小野久留美個展『(E)closion』をこの機会にどうぞご覧ください。


中村奈央


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土の中では絶え間なく様々な生き物がうごめいているが、その様子は直接見ることはできない。

「写真を土に埋める」という行為を行ない、土中から取り出すと、写真の上で色々なものが動き、流動した形跡が見て取れる。埋めた写真が暗い土の中で映像のように動き変化していく様子を、いつも頭の中で思い浮かべてしまう。


今回の個展では、妊婦の腹部をクローズアップで撮影した写真や、育てていた蚕の写真などを埋めて制作した作品を展示する。 それは私にとって、どちらも土の中の様子と強く結びつく。日に日に変化していく胎児の様子は、産まれてくるまで見ることはできない。また、蚕も凄まじい変身を遂げるが、その様子は繭という閉ざされた空間にあり、見ることはできない。変化の最中の様子は決して見ることが叶わないが、不可視な場所で確かに動いて変化しているという事実がある。 


展示会場であるrusu、以前は人の営みがあった家の中という空間も、本来ならば他人が覗くことはできない。


rusuは老朽化し今後取り壊される予定だ。 


床下からあらわになった土。いつかは産声をあげる生命。繭から生まれ出る蛾。


閉じた状態から外に出現し、不可視的なものが可視的なものになる瞬間を(E)closionで目撃して頂きたい。


小野久留美


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